隠れOSASに気を付けよう

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10 秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や著しく弱くなる「低呼吸」が繰り返され、日中の強い眠気や生活習慣病を引き起こす疾患です。何が困るかと言いますと、夜間に何度も酸欠状態になってしまうのです。呼吸が止まって酸欠になり、そして苦しくなって呼吸を再開するのです。脈拍は乱れ、血中酸素濃度も上下動します。結果として、心臓や脳の血管に大きなダメージを与え、脳卒中や心筋梗塞の危険因子であることが知られています。日本の成人では、実は900万人以上がOSASの基準を満たすと推計され、加齢やストレス社会の影響で年々増加傾向にあります。ただ、治療下にある方はわずか50万人程度に留まっているとも言われています。ご自宅で出来る無呼吸チェックについてもお示ししますので、是非ご自宅で試してみてください。

日本人に多いOSASの特徴

  • 男女差
    男性10–17 %、女性3–9 %と男性に多いものの、更年期以降は女性もリスクが高まります。これは女性ホルモンの減少に伴って筋力の張りが落ちるため、閉経を機にいびきが悪化し得るということが医学的に証明されています。
  • 「隠れOSAS」
    日本のOSAS患者さんの約40 %は肥満ではありません。また、日中の眠気を感じていないケースも約半数あり、見逃されやすいことが問題になっています。わかりやすく肥満で、日中眠くて・・・という状況でない患者さんも、当院では数多く拝見しております。実は、このOSASはアゴやノドの構造によって悪化するのです。そして、我々日本人は比較的アゴが小さかったり、ノドが狭い方が多く、わずかな体重変化や飲酒でいびきが悪化することも良くあるのです。ではそんな患者さんたちはどのようにして当院に来院されるかというと、ご家族やご友人からいびきや就寝中の呼吸停止を指摘されていらっしゃるのです。ご自身でお困りでなくても、周りの方からのご指摘があれば、お気軽にご相談ください。

STOP‑BANG質問票でできるセルフスクリーニング

項目内容点数
Sいびき(Snoring)1
T日中の疲労(Tired)1
O呼吸停止の指摘(Observed)1
P高血圧(Pressure)1
BBMI≧35 kg/m²※1
A年齢≧50歳1
N首囲≧40 cm1
G男性(Gender)1

これらを合計し、 3点以上でOSAの可能性が高いとされます。
日本人ではBMIカットオフを30 kg/m²に下げると診断能が向上し、中等症以上を感度95 %で捉えられるとの報告もあります。STOP‑BANG法は問診のみで即座に判定でき、病院受診の目安として日本呼吸器学会のガイドラインでも推奨されています。(一般社団法人日本呼吸器学会)。
ちなみに首のサイズを測るときは、普段お召しになっているシャツやブラウスのサイズをもとにご判断頂ければ、簡単にわかりますね。

アジアで目立つ「非肥満型OSAS」

欧米では肥満が主要リスクですが、アジア人は肥満度が低くても発症率が欧米と同程度と言われています。これは下顎が小さい、上気道が狭いなどの頭蓋顔面形態が関与しているためと考えられています。ざっくりと言えば、欧米の方々に比較して、アジアの人々は顔面の凹凸が少なく、顎が小さい傾向にあるということです。OSASは物理的な空気の通り道のサイズが発症に大きく響きますので、顔面の構造がダイレクトに影響するわけです。

なぜ見逃されやすい?

  1. 外見上「太っていない」ため本人も医療者も疑いにくい。
  2. いびき以外の自覚症状が乏しいケースが多い。
  3. 健診で測るBMIだけではリスクを拾えない。

日常生活で注意するサイン

  • 慢性的ないびき
  • 就寝中の呼吸停止
  • 起床時の頭痛・ノドが乾く感覚
  • 昼間の集中力低下や交通事故歴

    これらがある場合、STOP‑BANGで自己チェックし、陽性なら睡眠専門医療機関へご相談ください。

まとめ

日本では「肥満ではないから大丈夫」と油断している人にもOSASが多く潜んでいます。自宅で簡単にできるSTOP‑BANGを活用し、該当する場合は医療機関での簡易検査やポリソムノグラフィを受けましょう。肥満の有無にかかわらず、“いびきは身体からの警告”です。適切な診断と治療で、心身の健康と安全な日常を取り戻せます。当院では皆様がぐっすりとお休みになることをサポートしてまいります。