時差ぼけの対処法

 GWも終わって久しいタイミングではありますが、出張や旅行に備えて時差ぼけに関する情報をまとめてみましたので、皆さんの参考になれば幸いです。時差ぼけは、複数のタイムゾーンをまたぐ旅行によって引き起こされる一時的な睡眠障害です。正式には時差症候群(jet lag)と表現します。タイムゾーンが異なるということは当然2地点の間で時差が生じますし、我々の体は出発地点の時間に合わせた体内時計で朝や夜を認識するので、そのズレによって様々な影響を感じます。特に疲労、不眠、異常な眠気などが代表的な症状ですね。皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか。

 さて、元々人間の体内時計は約25時間と言われています。1日は24時間で形成されていますので、毎日1時間のズレが生じているわけですが、我々はこれを自動で睡眠中に調整してリセットしています。だから規則正しい生活をしている方は、毎日同じ時間に目が醒め、同じ時間に眠くなるわけです。では、長距離移動によって”不自然な”時間のズレが起きると、我々の体はどんな変化が起きるのでしょうか。例えば、出発地が夜の22時を迎える頃に、到着地が朝の7時であったとしましょう。体は夜モードで、周りの環境は朝、というわけです。当然旅行の興奮も束の間、お部屋に着いたら強烈に眠くなるでしょう。それもそのはず、体内時計は夜22時のままですから。ただ、仕事も旅行も、到着日からしっかり動きたいですよね。いくつかの解決策をお伝えしましょう。

 時差ボケの非薬物療法としては、光療法や仮眠の利用などがあります。まず、人間は朝太陽光を浴びる事で、半日後に体内でメラトニンを作り出します。メラトニンは、睡眠と覚醒のサイクルを調整するホルモンで、睡眠を語る上で欠かせない要素です。つまり、現地時刻の朝に到着したならば、サングラスを外して、直射日光を大いに浴びるのです。逆に現地時刻で夜に到着したなら、明るいネオンや照明は避け、暗い光の中過ごした方が良いでしょう。即効性はありませんが、滞在中、朝一番はしっかり太陽光を浴びるという習慣は、とても理にかなった調整法です。

 人間は寝溜めすることができない生き物ですが、飛行機に乗るタイミングで現地時刻と行動を合わせるのも良いでしょう。飛行機の座席に座った時、現地時刻が朝ならば、眠気を紛らわせて現地時刻が夕方になるまで眠らないように試みましょう。現地時刻が夜ならば、眠れなくともアイマスクをして目を瞑り、ゆっくり深呼吸して擬似的に睡眠している状況を作るのです。場合によっては機内食や映画を諦めるのも良い選択肢かもしれませんね。機内で頂くサービスも旅の楽しみの一つではありますが・・・。もちろん、これらの対策を考える上で、アルコールやカフェインについても気を配る必要があります。カフェインは当然睡眠を妨げます。ということは、現地時刻に合わせた夜ふかしには有効ですし早寝するなら摂取は禁物です。ただ、アルコールはおすすめしません。アルコールは眠気を誘いつつ、代謝物のアセトアルデヒドによって覚醒するという厄介な代物ですから。

 そして現地に着いてからは、普段の快眠法を徹底すると良いでしょう。つまり、朝日を浴び、コーヒーを美味しく頂くのです。日中は体を動かし、夕食のお酒はほどほどにします。夜はスマートフォンをoffにし、ゆっくりとお風呂に浸かってストレッチをします。そして、眠くなったらベッドに横たわりましょう。初日からうまく眠れなくても、焦る必要はありません。その時は椅子に腰掛け、深呼吸をしてみます。そして、自然と眠気が来るのを待つのです。間違ってもスマートフォンやPCは操作しないでください。光と操作の活動で脳は起きてしまいます。

 さて、いかがでしたでしょうか。お薬に頼らない時差ぼけ対処法をお伝えいたしました。当院では睡眠に関して様々な検査、治療を提案いたしますが、お薬を使わない治療法、対処法もたくさんあります。お悩みの方は、お気軽にご相談くださいね。


まとめ

  • 現地の時差に合わせた活動/就寝スケジュールの調整を行う
  • 直射日光とカフェインをうまく利用し、体内リズムを整える
  • 夜のアルコールはほどほどに
  • ベッドでスマートフォンは操作しない



Reference: Andrew Herxheimer. BMJ Clin Evid.2014;2014:303.  PMID: 24780537