”無呼吸”ってどんなこと?
皆様こんにちは。横浜呼吸器クリニックでは、睡眠医療に特化した診療を行っていますが、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療を得意としています。このコラムでは、睡眠時無呼吸症候群でどのような症状をきたすのか、わかりやすく解説していきます。
まず、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、その文字通り、息が詰まり(閉塞性)呼吸が止まり(無呼吸)いろいろな症状をきたす(症候群)病気のことを言います。一般的なイメージとしては、肥満の方がかかるという印象が多いかと思いますが、肥満以外にも様々な原因があり、実は"隠れ無呼吸"のような状況の方はとっても多いのです。睡眠時無呼吸症候群を患っている方は、睡眠中に喉の筋肉が緩んでしまい、気道(空気の通り道)が塞がれることで起こります。つまり、寝ている間に首を絞められているような状況ですね。これにより呼吸が妨げられ、健康や生活の質に大きな影響を及ぼします。そのため、睡眠時無呼吸症候群の症状を理解し、睡眠専門医療機関を受診するタイミングを見極めることは、早期診断と効果的な治療のために非常に重要なんですね。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中に気道が部分的または完全に閉塞するエピソードを繰り返すことを特徴とします。無呼吸(気流の完全な停止)または低呼吸(気流の部分的な減少)と呼ばれるイベントが発生しますと、人間は酸素を取り込むことができません。すると身体は酸素レベルが低下し、心臓血管系への負担が増加します。このようなエピソードは一晩に何十回、何百回と起こり、10秒以上続くこともあり、体が正常な呼吸を取り戻そうと奮闘するため、脳は睡眠と覚醒を繰り返します。当然そんな状況であれば、質の良い睡眠はとれませんよね。
OSASの主な原因は、睡眠中にのどの筋肉が緩み、気道がつぶれてしまうことです。体重過多、生まれつきの気道の狭さ、顔の構造の特徴などにより、この症状を発症するリスクが高まります。顎が大きく張っていたり、扁桃や舌が小さく、薄ければ、空気の通り道が広いので、OSASを発症しにくいこともあります。OSASを治療せずに放置すると、端的に言えば睡眠の質はさがり、夜間なんども酸欠になるため、体に負担がかかり続けます。すると、高血圧、心臓病、糖尿病、脳卒中などの深刻な健康合併症を引き起こす可能性があります。しかも、痛くもかゆくもありませんので、なかなか精密検査までいたらないのが実情なんですね。
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状
OSASの症状を認識することは、病気を理解する第一歩です。症状は個人によって大きく異なりますが、多くの場合、夜間の症状と昼間の症状の2つに分けるとすっきり理解できると思います。
■夜間の症状
1.大きく持続的ないびき
OSAの特徴的な徴候のひとつは大きないびきです。いびきと無呼吸は密接に関係しています。ガー、ガーといびきをかき、あるタイミングでカッと音を出して呼吸が止まる。そして少ししたら、またガーガーといびきをかくといった具合です。これは、狭くなった気道を通過する気流の乱れが原因です。いびきをかくすべての人がOSASというわけではありませんが、大きないびきに加えて頭痛、眠気、だるさなどがあれば、それはOSASかもしれません。
2.呼吸停止のエピソード
このような呼吸の停止は、しばしばベッドパートナーから指摘されます。実際にクリニックへいらっしゃる患者さんも、ご自身が治療を希望するというよりも、パートナーの方が心配になって受診を促すというケースが多いです。実際に、パートナーの呼吸が止まる瞬間を目の当たりにすると、心配になりますよね。実際に睡眠しているところを観察すると、OSASがある人は、息が詰まったりあえぐように見えたり、苦しそうにもがいている様子が確認できます。
3.夜間頻尿
夜間頻尿は、あまり知られていませんが、OSASの一般的な症状です。OSASがあれば、夜間十分に体が休まりませんから、膀胱(尿を貯める臓器)にも影響が出るんですね。勿論、睡眠とは関係なく過活動性膀胱や前立腺肥大症、尿路感染症など様々な理由で夜間頻尿は起こり得ますので、もし尿の回数でお困りのかたは、泌尿器科の先生にご相談されると良いでしょう。
4.起床時の口の渇きや喉の痛み
いびきや気道閉塞による口呼吸は、のどの乾燥や痛みに繋がります。いびきをかくとき、のどの中では空気の乱流や大きな振動が発生しています。のどを痛めてしまうのも無理はないですよね。そして、実際にOSASの治療を受け、起床時ののどの違和感が軽くなったと仰る患者さんは多いです。
■日中の症状
1. 日中の過度の眠気
OSASの最も典型的かつ重要な症状は、日中の眠気です。実際にOSASがある方に精密検査を行うと、8時間眠っていても、半分程度覚醒(脳が起きてしまっている状態)ということもあります。そうすると、ご自身ではしっかり睡眠時間を確保したと考えていても、実は睡眠時間を厳しく制限してしまっているのと同じような状況・・・なんてこともあり得ます。睡眠はゆったりとノンレム睡眠・レム睡眠を繰り返すようにできているので、頻繁に中断されることで睡眠のリズムが崩れ、十分に脳も体も回復できません。だから、眠いんですね。そのため、OSASを患っている方は、ベッドで十分な時間を過ごした後でも、一日中疲れや眠気を感じることが多いのです。
2. 朝の頭痛
OSASの方は有効な睡眠をとれていないことに加え、無呼吸状態が長ければ長いほど、酸欠状態で過ごしている訳です。そうすると、睡眠が妨げられているため、起床時に頭痛を感じることがあります。頭痛はとてもつらいですよね。気分も鬱々としますし、あらゆるパフォーマンスが下がってしまいます。
3.集中力の低下
OSASの方は質の高い睡眠をとることが難しいので、集中力が低下しやすいです。実際に、OSASの有無によって運転事故の割合は大きく差が出ると報告されています。そのため、運転業務や危険物の取扱いがある方については、免許の申請はもちろんのこと、職業上の制限等が発生することもあります。勿論、適切に治療を受ける事で、OSASが無い方と同じように働いている方もたくさんいらっしゃいます。もししっかり寝ているはずなのに、頭がぼーっとしてしまって困っているのであれば、一度OSASの検査を受けてみても良いでしょう。
4.気分の変化
無治療のOSASは、うつ病や気分障害のリスクとして知られています。睡眠不足も同様に、精神面へ悪影響を及ぼします。眠るということは、からだやあたまを休める上で、欠かせない要素なのです。
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どのような方が閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいのか
OSASを発症する可能性を高める要因は、複数あります。これらの危険因子を認識し、もしたくさん思い当たるのであれば、一度受診されても良いかもしれません。
1.過度の体重・肥満
体重増加はOSASの大きな危険因子です。首や舌の周りに脂肪がつくと気道が狭くなり、閉塞の可能性が高くなります。そのため、学生時代は問題なかったけど、そこから体重が増え、社会人になってOSASを発症したというケースはとても多いです。
2.年齢
OSASは成人~高齢者に多くみられますが、加齢とともにのどの筋力が低下し、より気道が閉塞しやすくなります。のど周りを支えている筋力が弱まれば、当然気道は狭くなってしまいますよね。
3.性別
OSASは男性の方が発症しやすいと言われていますが、実は閉経後の女性もまた高リスクなのです。これは閉経に伴いホルモンバランスが変化し、のどの筋力の張りが落ちてしまうことに由来します。お年をめされた女性の声のトーンが、少し落ちる事ってありますよね。実はこんな変化が女性の体の中で起きているのです。
4.家族歴
OSASは肥満だけでなく、顎の形や大きさ、首の太さや長さなど、持って生まれた顔の個性の影響を受けます。空気の通り道が狭いのがOSASの原因ですから、小さなお顔をされている方は、わずかな体重変化でいびき・無呼吸が悪化したというケースもよくあります。ご家族のなかにいびきや無呼吸がある場合、ご自身もまた同じ状況となる可能性は十分ありますね。
5.飲酒や睡眠薬
お酒と睡眠薬の共通点として、筋弛緩作用(筋肉を緩ませる力)があります。勿論睡眠薬の中でも筋弛緩作用が強いもの、起きにくいものと様々なバリエーションがありますので、気になる方は主治医の先生へご確認ください。いずれにせよ、筋肉が緩むということは、空気の通り道が狭くなるということです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群が起きやすい条件や、実際に起きたときの症状についてまとめてお伝えしました。OSASは決して珍しい病気ではありません。そして、睡眠をとらない人間はいません。もし睡眠に関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。お読みいただいてありがとうございました。