大学生の睡眠不足と成績の関係性

 みなさんこんにちは。驚くほど暑い日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、現在夏休み真っ只中、或いはご家族が夏休みという方も多いかと思い、夏休み明けの試験シーズンに向けた内容の論文(Sleep Biol Rhythm 2023;21,317-83)をご紹介したいと思います。


今回学ぶこと

  • 学生の睡眠の実態を把握する。
  • 睡眠不足が引き起こす不調を理解する。
  • 学業と睡眠の関係性を理解する。


内容

 睡眠というものは、毎日ある程度同じように、同じリズムでとることが理想的とされています。ただ、学生は長期休暇、アルバイト、課外活動など様々な要因で生活リズムが変わることが指摘されています。その中でも、学生における睡眠不足は社会問題と考えられており、睡眠時間やその質を上げることは、学生が安全に実りある学生生活を送る上で重要な要素です。
 今回、マドリード自治大学の学生(18歳〜23歳 合計640名)を対象にアンケート形式で睡眠時間、睡眠に関する習慣、学業成績などを調査し、統計学的に評価されたようです。さて、スペインの大学生たちはどのような睡眠をとっていて、それは学業成績と関係があるのでしょうか。
 
 さて、今回の研究では、睡眠の質をアンケート形式で評価しています。国際的に使用されているピッツバーグ睡眠質問表を用いて主観的な睡眠の質について調査したようです。これまでの様々な睡眠に関する研究で、学力試験の結果と睡眠時間、睡眠の質は相関すると報告されています。シンプルに睡眠時間を確保できていること、それによって日中に眠気を感じないこと、リラックスしてベッドに入れることなどが保たれているというのが重要なのです。特に学生にとっての試験期間というのは、社会人における昇進試験や資格試験など、ストレスがかかるイベントです。ストレス下において、自分のタスク管理、メンタルのコントロールなどを行い、結果として睡眠時間を確保するというスタンスを保つことが出来れば理想的ですね。

 そして、今回の研究では、主観的な「睡眠の質」、「睡眠時間」、「睡眠効率」、「睡眠障害の有無」、「昼間のパフォーマンス低下」などと、学業成績の関連が示されました。特に睡眠不足による平日の睡眠負債は、より学業成績の悪化と関係していたようです。 

 もちろん、この研究にも弱点があります。研究に参加してくれた学生が対象ですので、睡眠と学業の関連性について興味がある人々における調査を行ったわけです。睡眠への興味が旺盛な方も、あまり気にならない方も含めてデータを集計したら、また少し趣の異なる結果が出るかもしれません。また、睡眠に関する評価が主観的なアンケート形式によるものですので、精密検査を行った研究に比べるとその点の信頼性が劣ります。

 それでは、この研究から何を学べば良いのでしょうか。それは、とてもシンプルな答えです。
 

「とにかく睡眠時間を確保する」


 
 いやいやそんな当たり前のことですか?というお叱りを受けそうですが、本当にここに尽きるのです。巷では△⚪︎睡眠法や、睡眠の質が上がる(という触れ込みの)食品などがしばしば目につきますが、残念ながらそういった商品が睡眠に良い影響を与える根拠というのは十分ではありません。また、睡眠については圧倒的に「時間>質」ですので、いくら素晴らしい環境、コンディションで寝たとしても、睡眠時間が不足していれば、元も子もないのです。実際に、睡眠不足の状況ではどれだけ人体に悪影響を与えるのか・・・という論文は数多く発表されており、うつ病や糖尿病、高血圧症、不整脈、脳卒中など様々な形でメンタル、フィジカルいずれの側面においても有害であることが証明されています。また、勉強や運動の記憶は、主に睡眠時間の間に脳が整理して学習するように出来ているので、睡眠は削っちゃいけないんですね。「寝る間を惜しんで」という言葉は過去のものにしましょう。

まとめ

  • 睡眠の質が良い群は、学業成績が良い傾向にあった。
  • 平日の睡眠不足が多い群は、学業成績が悪い傾向にあった。
  • 試験期間に睡眠時間が減少し、学業成績を悪化させる可能性が示唆された。
  • 睡眠時間を確保することが重要。