概要と主な症状
ナルコレプシーや過眠症は一般に「眠り病」などと表現されることがありますが、夜間十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる病気です。また、一部の方は情動脱力発作(笑う、泣くなどの時に体の力が抜けること)などを起こすことも知られています。例えば・・・
・10時間程度寝ても、まだまだ眠い
・疲れている訳でもないのに、突然寝てしまう
・笑ったり、驚いたり、怒るといった感情が引き金となって、突然力が抜けたり意識がなくなる
・入眠時に金縛りにあう
・入眠時に幻覚を見る(例:怪しい人影や化け物が見える)
などの症状が代表的です。こういった症状は時に共感されにくく、「生きづらさ」を感じている方も少なくありません。多くの患者さんは10代から20代前半に発症すると言われているため、ご家族さま、お子様で過度に眠気を感じる方がいらっしゃるのであれば、一度精密検査(MSLT)を受けることをお勧めいたします。
原因と検査
ナルコレプシーの原因は、覚醒状態(起きている状態)を維持するのに必要な神経物質であるオレキシンを作り出す神経細胞が、何らかの理由で変性(変化)してしまっていることにあると言われています。ナルコレプシーは、カタプレキシー(情動脱力発作:笑ったり泣いたりした時にガクッと力が抜けること)の有無および髄液中オレキシン濃度低下の有無により、タイプ1とタイプ2に分類されます。ナルコレプシーの診断には、上記のような症状の評価に加え、睡眠潜時反復検査(MSLT)を行い、眠気の程度およびレム睡眠の出現しやすさを評価する必要があります。
意図しないタイミングで"眠ってしまう"ことにより、学業や就労に励むにあたり、困難に直面している患者さんは少なくありません。実際に、当院では学生の方や20代の社会人の方が眠気に困って受診されています。当院ではこれらの疾患を診断するために重要なMSLT検査を実施できますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
※MSLTは検査可能な日数が少なく、検査までお待たせする可能性があります。
検査をお急ぎの方は、MSLTを実施可能な日本睡眠学会認定専門医療機関へご紹介いたしますので、担当医へご相談ください。
治療
ナルコレプシーや過眠症の治療に関して、残念ながら現時点では根治療法は確立されていません。ただ、ライフスタイルの整理とモダフィニル(モディオダール®︎)の適切な内服で、病気がない人と同じように生活することが可能です。
治療薬として用いられるモダフィニル(モディオダール®︎)は覚醒状態(起きている状態)の維持を助ける薬剤で、モディオダール適正医療機関でのみ処方が可能です。また、生活習慣の整備も重要です。例えば規則正しい睡眠スケジュールを確立したり、日中に短時間の昼寝をしたり、アルコールの摂取を避けるといった試みが重要です。
なお、これらは慢性疾患ですので、薬物療法と睡眠環境の整備、生活習慣の指導を行いながら、気長に治療に取り組んでいく必要があります。担当の医師と相談しながら、無理のない治療プランを作っていきましょう。また、当院はモディオダール適正使用委員会認定医療施設ですので、既にMSLTや髄液検査などでナルコレプシー、あるいは過眠症と診断された患者さまの治療継続についても承ることができます。